ACN NIHONBASHI RIVERSIDE BLDG.

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    オフィスビルの内外装全てをリニューアル
    フロア構成も新たにバリューアップ

企 業 : 株式会社ACN.
種 別 : 総合ソリューションコンサルティング/不動産
概 要 : ビル改修
所在地 : 東京都

  • 問題解決こそコンセプトの定義。フロア構成までもリニューアルし、デザインのみならず収益性をも向上させる

地下3階、地上8階建てのオフィスビルを購入。既にテナント退去済みのビルをリニューアルしたい。これが今回の施主からの要望であった。
どこまで手を入れるか。これにかけられるコストはのちのテナント収入を考えながら設定をする必要がある。
事業計画を立てるべくまずは内覧を行い、まずはビルの印象からリニューアル箇所をチェックし、メニュー立てを行う。
外観ファサード、1階エレベーターホール周り、そして各フロアの床壁天井。これに加えて古くなった設備の更新・・・等々。

同時にどのようなフロア構成で賃料設定を行うか、現状ビルの立地や周辺の企業の企業を観察しながら慎重にプログラムを考えて行く。
決してロケーションは悪くないが、果たして地下3階までを全てオフィスビルにして、直ぐに借り手がつくだろうか?
今回のビルは大通りから一本中に入っており、さらに1階のテナントはエレベーターホールの奥にあり、道路に面していないところから飲食は難しい。
現状のように1階~地下3階までを1つのテナントがショールームや作業場として使ってくれるような企業が見つかれば良いが・・・オーナーの心配は尽きない。

オフィスの場合、フロアごとに1テナントずつ貸すと、どうしても今回のような1階から地下3階といった条件が悪いフロアを貸すのは難しくなる。
ましてや同等の賃料を取ることは不可能に近い。どうしても上層の賃料を高く設定して、下層とのバランスを取ることになる。
相場を考えながらの賃料設定を行うが、それでもテナントがつかない場合もあり、その期間が長ければ長いほど大きなロスになってしまう。
一般的に、まずはベストシナリオからスタートさせ、後にテナントの賃料設定を変動しながら様子を見て行くが、それはあくまでも一般的な話しである。

私たちは、出来るだけ短期間でテナントをつけて、満床としたい。オーナーであれば誰もが思うことであり、そうなるようにするのが、我々プロの仕事である。
そこで今回、以下の3つをコンセプトとして立案した。

1. 条件の悪い1階から地下3階に付加価値を与える
2. 上記によりテナントの空室期間ををつくらない
3. 最終的な賃料収入をアップさせる
  • コンセプトに対するデザインアプローチ

今回の私たちの提案の骨子は、オフィスとしては賃貸収入の期待が薄い『1階~地下3階を各階のテナントの賃貸面積へ割り振ること』である。
つまり3つのフロアそれぞれを「オフィス」としてテナントに賃借せずに、2階~8階に入居するテナントの一部に含ませることである。
通常フロアごとに賃料を考えてしまう固定概念をくずし、物理的に縦積みのフロアを理論上横に連結させることにする。
一見都合の良さそうな解釈だが、果たしてそんなことが出来るのだろうか?
もちろん出来る。それはオーナーの「出来るだけテナントを付けやすくし賃料収入を増やしたい」という思惑と、
テナントの「出来るだけ入居時のワンタイムの負担を減らしたい」というニーズを合致させることで、可能となるのだ。

ポイントはここに入る企業が、15人ぐらいの小規模の企業であることだ。
小規模の企業にとって、オフィスは出来るだけ手をかけずにデスク数を入れて面積を有効活用したい。
一方でオフィスに必要な受付や会議室は、見栄えが重要であるが故にコストもかかる。一度造れば退去時は原状回復が必要だ。
つまり本音を言えば、こういったものは出来るだけやらずに負担を少なくしたいのである。
もちろん対外的な印象や、社員あるいはリクルートのことを考えれば、働きやすい環境にしたいことは間違いない。
しかし手が出ないのである。これまで多くのオフィスを手掛けてきた私たちには、テナントの声が痛いほど良く分かる。

ここでの企業の潜在的ニーズは「社員が欲しいと望みながらも、会社では絶対作らないであろうもの」にある。
つまりテナントが自ら費用をかけて造らずとも、予めデザインされた魅力ある空間を用意しておくことで、潜在的なテナントの欲求を満たすことが出来る。
もちろんこれらの賃貸面積は、上層階の各テナントの賃料として割り振られるので、実際は下層階にあるにも関わらず上層階の賃料設定で面積が増えたことになる。
同時にテナントを探す数も減らし、下層階問題も解決することで、空きフロアの問題も賃貸収入の面も同時に解決することが出来るのである。

実際これは後に、テナントからの強い共感を得ることになった。完成前に相場より高い賃料設定でもテナントが次々に見るかったことから、ビル自体の付加価値を高めた結果だと確信する。

■1階を共用のワークラウンジに(上記写真)

1階は各テナントのワーカーが使える、共用の《ワークラウンジ》とした。
カフェのようなリフレッシュ空間であり、電源もWIFIも用意してあるので仕事も行える(※詳細はビルにお問合せください)。
バリスタこそいないものの、コーヒー片手にリフレッシュ、社員同士で気分を変えての打ち合わせも夢ではない。
これらの施設をこの規模のテナントが独自で用意することはまずあり得ないことから、間違いなく他との差別化になる。

■「ひとりでも二人でも、みんなでも」を実現するバづくり(上記写真)

これをデザインスキームに据え、テーブルセッティング等やオペレーションを考えた快適環境となっている。
奥まったところには個室も1室用意した(上記写真)。
これは応接室としても使えるので、わざわざ来客を上層階のオフィスまで来てもらう必要がない。
これにより、オフィスフロアにはあえてコストをかけ受付を造らずとも、完全にバックオフィスとすることが出来る。
デザインされた空間は企業のイメージを高めてくれる。しかし予め用意されている共用部とすることで、決して贅沢をしているという印象にはならないだろう。

もちろんこの個室は一人で使う集中ブースとしても、あるいは昨今ニーズの高いテレワーク会議室のように使える空間でもある。
リフレッシュから、一人で集中、他の社員とのコラボレーションなど、まさに使い方はフレキシブルだ。
このエリアは原則テナントの関係者しか使わないので、ソフトセキュアな空間でもある。

■地下1階、2階を会議室に(上記パース)

地下1階、2階をテナント用の会議室とした。地下3階は細かく区画し貸し倉庫とした。
来客時は一旦1階のワークラウンジでお待ち頂き、お迎えに伺うことが出来る。
先にも書いたが、こうすることで来客をわざわざオフィスまで招き入れずに済む。来客も楽であるが、何より上層階にコストをかけて受付を造らないで済むのだ。
出入り業者であえれば、あえて会議室に行かずとも1Fで打ち合わせも出来るし、お客様はそのまま地下の会議室にご案内出来る。

各テナントには、天井まで完全に仕切られた個室の会議室が1~2室割り当てられる(詳細はビルにお問い合わせください)。
会議室の大きさは、6人用、8人用、12人用のタイプがあり、テナントが必要なものを選ぶことが出来る。
インテリアは1階のイメージを踏襲した空間としつつも、それぞれに変化を与えているので、好みから選んでもらえると良い。
電源やLAN設置はもちろんのこと、ガラス面をホワイトボード代わりに書けるような会議室ならではの工夫も施してある。

■オフィスフロアにワンポイントのデザインの工夫を(上記写真)

一般的な中小規模のオフィスビルの場合、テナントフロアは、白いクロス壁にグレーのタイルカーペットと、ごく平凡なものが多い。
なぜだろうか?1つの大きな要因としては、オーナーからの要望によるものが大きいと考えられる。
所有ビルを収益目的の「不動産」と考えていると、どうしても余計なことをすることで「お金がかかる」と考えられがちだ。
しかしこれは半分当たっているが半分間違っている。確かにオフィスビルは「不動産」であろう。
しかし、「不動産価値」はもはや立地だけではない。またデザインすることが必ずしもコストアップにつながる訳ではない。
もし今までがコストアップになってしまっているとすれば、それは「デザインのさせ方」、「デザインの仕方」が間違っているだけだ。
最も残念なことは、こうした思い込みが不動産価値を高める「機会損失」になっているということだ。デザイン事務所も自分たちの首を絞めている。

上記の写真を見てもらいたい。オフィス空間が平面的にならないように、カラーや表情を変え、奥行き感が出るようデザイン上の工夫をしている。
例えば写真のように、梁下と柱型とは透き通るような白で印象を消し、逆に天井面の折上げを木調で協調することで、実際より天井高が高く見えるようにしている。
壁面の壁も同系色でありながら若干温かみのある木目の表情とグレーのクロスで素材感を変え、これも奥行き感を引き出している。
しかしこれを仮に天井や壁にごく平凡な白いクロス、そして床にグレーのカーペットとしたとしても、コスト上は何一つとして高くなる要素はないのだ。
今回採用したものもクロスであり価格帯は変わらない。単にデザインするとコストが変わるという思い込みがデザインを平凡にさせているだけに過ぎない。
繰り返しになるがデザインがコストアップの容認にはつながらない。なぜならこれが何色であってもコストに大きな変化はなく、先入観がそう思わせているのだ。

また社会通念的にも、オフィスビルは「人が働く場」であることが浸透していきている。箱だけ用意すれば中身はどうでも良いというのは、古い考えになりつつある。
ビジネスである以上収益を上げるのは当たり前であるが、同時に我々デザイン事務所は、世の中を豊かにする責任を担っているはずである。
単に便利ということではなく、場を提供するものはそれによって豊かな環境を提供出来る訳なのだから、設計家としては、やるからには関係者の利益と環境向上を併せて行いたい。

Design Background

我々は《働き方をデザイン》する会社である。インテリア、建築、デザインプログラミングの総合コンサルティングです。
これまで多くのテナントオフィスを設計して来た経験があり、このノウハウを活かし、ビル全体を総合的にデザインしている。
《ヒトコトバ》とは、human, activity, placeが三位一体となったソリューションの提供である。
つまりここではすなわちワーカー、働き方、オフィスビルの総合的なデザインの提案である。

多くのオフィスビル、特に中小規模のビルにはコンセプトというコンセプトが存在しない。
多くの事務所が言っている提案は、CMF(色・素材・仕上げ)の提案にしかすぎない。
ワーカーの違いもなければ、この様に働けるというポリシーもないのだ。ただ「見た目」の話だけである。
まるで「魂のないもぬけの殻」のようなオフィスビルで、どのやって会社、あるいは社員たちの夢をかなえられるのだろう。

詩と文章がそうであるように、あるいはビルと建築の違いがそうであるように、そこに必要なドラマがあるはずだ。
我々の挑戦は始まったばかりである。しかしここで働く人たち、目標をかなえようとする企業に
素晴らしい働きがいのある環境をデザインする。それが私たちの使命の1つであると考えている。