企 業 : 株式会社ロワジール・ホテルズ沖縄
種 別 : ホテル
概 要 : リノベーション(バンケット・客室・ブライダルサロン)
所在地 : 沖縄県
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ロワジールホテル那覇
【 目 的 】 | ゲストルームの増築および各施設の改変 |
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【 施 策 】 | ローカル、インダストリアル、ボヘミアンの3つのエッセンスを融合 海外ブランドの日本へのローカライジング |
【 成 果 】 | 増加するゲストに対応 多様化するニーズに追随 ブライダルの演出効果UP |
大型リゾートホテルのリノベーションプロジェクト。
インバウンドの影響を受け、客室を増やしたいという要望からスタートした。
私たちは、根底にあるのは「多様化するゲストへの対応」と捉えた。いわゆるチェンジプロジェクトである。
近年ゲストのダイバーシティ化により、ホテルに求める客層や価値観は間違いなく多様化している。
ホテルでのんびり過ごしたい人たちもいれば、アクティブに動き回りたい人たちもいる。
個人もあれば、カップル、家族、親戚一族もあれば、法人、チーム、観光団体などつながり方は様々だ。
ホテルの設えにもゴージャスを求める層もあれば、シンプルで機能的が心地よいという層もある。
ゲストの価値観が多様化する中で、どの客層やニーズを拾っていくべきか、正に経営の手腕が求められている。
もちろん施設側としてみれば、全体の客数が増えているだけに、出来るだけ多くのゲストを取り込みたい。
しかし「誰にでも都合の良いホテル」では、特徴を失いかねない。
特徴を失うことは、ゲストへの訴求を失うに等しく、致命的なのだ。
「多くを取り込むために何をするか」という発想は、もはや正しいスタートではない。
むしろ「何か新しい価値観を生み出す」こと、新たなムーブメントを作ることが重要である。
なぜなら結果、それが眠っていた深層心理を刺激して、多くの層を呼び込むことになるからである。
上記の点からも、どのような選択をしていくべきか、難しい局面を迎えている。
小規模ホテルがそれぞれのカラーを出している中、当該施設のような大型リゾートは、特色の出し方が難しい。
一つの理由としては、あるカラーに偏り過ぎると、それを求めない層からはじかれてしまうからだ。
これは結果、部屋を埋めきれないことになる。
とはいえ「皆に程良いホテル」というのでは、ゲストに訴求するものが低く、感度の高い客が集まらない。
ここで言う感度の高い客とは、ホテルのブランドを理解して、ファンになり、体験を求めお金を落としてくれ、
さらにファンを増やすために拡散してくれる、今重要視したい客層の1つである。
一つひとつのニーズを拾うにはあまりにも規模が大きすぎ、中々細かいニーズにまで対応できない。
しかしゲストが求めているのは、これまでのように単に見た目や対応の良さだけではないのだ。
必要なことは、ゲストの求める「体験」に対する価値の提供であり、そのために施設がやるべきことは、
新たな価値・体験に追随出来る施設づくりと考える。
今回当該ホテルが選択したことは、その時々に変化・可変出来る施設づくりだった。
つまり、これまでのように「バンケットでは披露宴」、「調書k会場ではブレックファースト」のように、
ある限定した使い方での平面計画を変え、「時にバンケット、時に会議室、時にコンベンション」であったり、
「時にブレックファースト、時にディスコ、時にシアター」のように、同じ空間でもニーズに併せて変化出来る
施設とすることにした。
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上記に従い、これまでバンケットだったスペースを婚礼だけでなく多機能で使える多目的ルームとした。
多機能となるように可動式間仕切りや隠せるオープンキッチンなど、用途で「変化」する機能を持たせた。
またデザインの点では大きな問題を1つクリアする必要があった。
この部屋は元々窓のない無窓居室であった為、ともすれば、とても閉鎖的な空間になりかねない。
時の経過を自然なかたちで感じるには、外光を通じて時の「変化」を感じられる必要があった。
そこで「ピクチャーウインドウ」と「トップライト」である。
ピクチャーウインドウは、リゾートのバルコニーから見える沖縄の「景色」を生み出す仕掛けである。
バルコニーのように手すりとカーテンを設け、景色はグラフィックで表現した。
自然な風景と見えるように、ただグラフィックを設置するのではなく、遠く靄がかかる様子を表現した。
ライティングにも工夫をし、時間の流れとともに昼間から夕方へと景色が変化するようにした。
また天井の疑似トップライトは、本物の光が天井差すように感じされる、照明効果を図った。
トップライト程のサイズに天井を深く折上げ、その上からライティングで光を下ろした。
上記2点の工夫で、無窓空間とは思えない程、明るく爽やかな光と景色が存在する空間とすることができた。
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ブライダルサロンは、「沖縄でのブライダルを最高のものに」というスローガンを立てた。
結婚式を素晴らしいものにしたいと夢見る女性は多い。今もなお、人生における最大のイベントの1つだ。
新郎新婦にとっては、当日の式が何より大切であるが、施設側としてはそこに至るまでの日々も大切にしたい。
新郎新婦の二人が、楽しく、ワクワクして、夢と希望にあふれ、その日を迎えてもらるためにどうあるべきか。
オーケストラでいえば、コンサート当日は正に観客にお披露目する晴れ舞台、同時に観客のための日でもある。
しかしそれが良いものになるかどうかは、そこに至るまでの曲作りにある。
それは二人だけにしかできない日々でもあるのだ。
数ある式場の中から、沖縄で、かつ当ホテルでわざわざ結婚式と披露宴を挙げる場に選んで貰うために。
ブライダルサロンは、雰囲気づくりから演出、そしてオペレーションにこだわった。
まず、元々壁だった廊下側の壁を抜き、ガラス張りにすることで、広く開放的にした。
第一印象として、爽やかな風が抜けるように。優しい光に包まれるように。そんな形でお出迎えしたい。
オフホワイトを基調とした空間に、透明、ベージュ、ペールグレー、ペールブルー、アクセントにブラウン。
沖縄の爽やかな空気感と空や海が引き立つようペールカラーを用い、グラデーションで奥行を重ねた。
初来店では沖縄の高い空を眺めながら、ソファ席でゆったりとどんな式にしたいのか想いが聞けるように。
具体的な内容を詰めて行く段階では、資料を広げながらう打ち合わせが出来るテーブル席で。
お互いのイメージが湧き、共有出来るように、テーブルの横にはモニターを設置。
そしてすぐ脇にもディスプレイスペースを設けた。
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日本のリゾートは、アジアのリゾートでもある。沖縄は最大のリゾートの1つである。
そんな中、年々増え続けるインバウンドの数は、ホテルにとっても大きな収入源である。
特にアジア圏からのインバウンド客は大きく、その受け皿を用意することは重要な戦略の1つだ。
彼らは大家族で来ることが特徴で、現在の悩みは家族で幾つもの部屋に分かれてしまうことだ。
ホテルの場合、時にフロアーも異なることがある。部屋の増築ではこの問題の解決が1つのポイントとなった。
まず天井高を高く取れるエリアを見つけ、そこにある施設を移設し部屋を増築する計画とした。
そして特に天高が取れる部屋は、ロフト付きの4ベッドルームとした。
その際給排水の増設が天井高を抑える要因となるため、外壁バルコニーを使い横引き配管を行った。
各部屋にはベッドのヘッドボードを利用して配管を行った。
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部屋のテーマは沖縄のCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)。
白い砂浜。マリンブルーの海。ペールカラーの木。琉球石灰岩の花ブロック。
これらをインテリアのモチーフに用い、部屋の中からも沖縄を心から満喫できる仕様とした。
※一部実施設計の段階で、変更になったものがあります。