企 業 : 株式会社ACN.
種 別 : 総合ソリューションコンサルティング/不動産
概 要 : ビル改修
所在地 : 東京都
ACN PRIME TOWER TOYOCHO
【 目 的 】 | 既存ビルを購入しバリューアップの上、転売 |
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【 施 策 】 | ファサード、エントランス、ELVホールのリニューアルによるバリューアップ |
【 成 果 】 | 現在の空室を0にし、バリューアップに見合った家賃の再設定で、収益性の向上 |
バブル期に建設されたオフィスビルは、そもそもの仕上げのグレードが高いものが多く、中々これだけのものを現在建てようとするとコストがかさむ。
しかしながら、さすがに築30年近く経過すると、見た目の古さはどうしても否定できない。グレードがそこそこ良くても、どこか古臭いのだ。【写真左がリニューアル前(BEFORE)/右がリニューアル後(AFTER)】
結局難しいのは、何かやりたいが、何かをやるととんでもないコストがかかってしまうことだ。あるいはコストをありきで実行すると、現状と比べて見劣りするものになってしまうことだ。
こういった悩みを抱えるビルオーナーは意外と多い。出て行く「コスト」と実現出来る「見た目」のバランスで折り合いがつかない。今回の案件は、正にそんな悩みに応えたプロジェクトである。
つまりコストを出来る限り抑え(=改修する範囲をしぼり)、デザイン性を今以上にする(=現代のデザインにリニューアルする)チャレンジングなプロジェクトだった。
さて、BEFOREの写真を見てもお分かりのように、バブル期に建てられたこのオフィスビルは、
仕上げこそ高級な大理石張りではあるが、建築当時のままのデザインは、どうしても古臭く感じさせてしまう。
また使用されているカラー・マテリアル・仕上げ(以後「CMF」)においても、空間全体がホワイト系で構成されているため、
「奥行き感」や「メリハリ」がなく、どこか硬質で殺風景な印象を与えている。
とはいえ、繰り返しになるが、この時代に建てられたビルは、とにかく仕上げのグレードは高い。
この立地条件のビルで総大理石張りなど、現在ではやりたくても出来ないとても贅沢な造りである。
別の言い方をすると、生半可な手の入れ方ではとてもバリューアップにはつながらないということだ。
また当時のグレード感に負けないデザインを実現しようとすれば、相当なコストを覚悟しなければならず、今の時代ではとても現実的とは言えないのだ。
よって計画当初から私の頭の中にあったのは、出来るだけ既存を活かしつつ、空間のアクセントになるものをアドオンして行くこと。
つまり現代的なアレンジを施すことによって、まるで最近建てられたビルのように蘇らせることであり、それが今回最も効果的なアプローチだと考えていた。
ところで、このビルの元々のデザインのテーマは、「ホテルのような空間」だったに違いない。
床パターンや仕上げのみならず、複合テナントビルには必要のないレセプションのようなカウンターが設けられているなど、
当時の狙いがCMFやそのフォルム自体から十分に感じられた。
上記のことから、私は、この建物が持つ特性とデザインの意図を活かしつつ、今の時代に合ったデザインとしてリメイクしようという考えに至ったのである。
前述のプローチに対し行った手法は、まず全体的に同じCMFが続くとても単調で平面的なこの空間に、
新たなカラーや光の陰影、そしてマテリアルや仕上げにグラデーションを出すことでレイヤーをつくり、奥行き感を出すことだった。
奥行き感の出し方は、使うものの色や素材感に幅を設けることで行った。
例えばカラーについて言えば、単片に現状最も際立つ石のホワイトを置いた時、
もう片方の単片に対極のブラックを置き、そこに至るまでのカラーを足し、グラデーションとなるようにすることだ。
ホワイトからライトグレー、ミディアムグレー、ダークグレー、チャコールブラック、ブラックまでの色設定を行った。
木目のブラウン、飾りフレームのブロンズ色、照明器具の真鍮色をアクセントとして調和を取る。
マテリアルにおいては、固いものから柔らかいものへのグラデーションとして、
大理石からスチール、木柄、ファブリック、ラグカーペットへと奥行き感をつくった。
ホールの見え方としても、中央の殺風景な空間をホスピタリティの感じる場にするため、
出来るだけ平面的に広くゆったりとしたソファーを採用し、あえてレザーを使わずにファブリックの柔らかさを活かした。
これにクッションのカラーと合わせて、ホワイトからブラウンまでのグラデーションになるようコーディネートしている。
最後にライディングである。ライディングは単なる照度の確保ではなく、これも奥行き感を出すのに欠かせない。
平面的で均一な明かりになっていた空間に「光だまり」をつくり、明暗的にもメリハリを出すことで、奥行き感を生み出している。
Design Detail
我々はアートワークにもデザインにもテーマを持たせている。例えば中央の連奏《9つのリング》。これにはある想いを込めている。
知、勇気、思いやりなど「人を幸せにする9つの要素」をリングという形に置換え、それらが連なり、積みあがって行くことで、より高く強い人となって行く様を表現したいと思った。
【人を幸せにする9つの要素】は以下のように考えた。どれも自身のパートナーを幸せにするのに欠かせない要素である。
1. 知識 2. 勇気 3. 配慮 4. 笑顔 5. 包容力 6. 変化適応力 7. 行動力 8. 冒険心 9. 健康
最後になるが、今回のプロジェクトを通じて我々が行ったことは、単に見た目だけの更新ではないということにも言及しておこうと思う。
我々が提供する「バリューアップ」というものは、機能面においても改善されている。
なぜなら常に《ヒトコトバ》づくりという視点で、このオフィスビルのエントランスのデザインも考えているからだ。
例えばホールにゆったりとした置かれたソファ。ホテルラウンジのように落ち着きのある快適な空間。
通常来客は早めにビルに到着しておき、そこで面会までの時間を調整しなくてはならない。
何もない所でただ立って時間を費やすのではなく、訪問前後に座って気持ちを落ち着かすことが出来ることは貴重だ。
今回のリニューアルによって、オフィスのグレード感を「ホスピタリティ」という要素を加えることでもバリューアップをしている。
その違いは写真を見て貰えれば分かって頂けるのではないだろうか。